〈Ⅶ〉~死者の想い

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  彼の名前は緋色… 僕はゆっくり目を閉じた。 緋色くんは少し変わった男の子だった。 それが何故かは分からない。 でも彼は僕を彼女に合わせようとはしなかった。 それは正しい。 自分独りでは無理だった。 自分を止められなかった。 僕は弱い人間だから… 人間弱いから…誰もがヒーローに憧れるのだ。 真っ直ぐで、心には太い芯が通って居るからだ。 だからそんな存在に憧れるのだ。 だが僕らは絶対にヒーローになれない。 人殺しがヒーローに憧れるなど、笑われてしまうだろう。 弱くて弱くて仕方がない人間だからこそヒーローのように自分の不幸や不安を押しのけ人の為に頑張る事などせずに、僕は自分の不満の捌け口として人殺しに走ったのだ。 そろそろ殺しに行く時間だ。 そう思って目を開くと、彼女たちはもう居なかった。 「ありがとう」 今日はヒーローになれるかもしれない。 だから僕はレジで一万円を出して、そのまま店を出た。 釣りはいらないぜ、心の中でそう呟いた。 「そんな事ヒーローやらねぇよ」 詩季のヤジが飛ぶが、3年前と変わらない味と彼女の笑顔に払う値段にしては安かった。 〈了〉  
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