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今日は気分的に冬らしい。春を集めて回ったこともあったが、例の天人の事件以来、この屋敷一帯の天候は我が主の思うがままになっているようだった。
「今日は寒いから、やっぱりお鍋が食べたいわ~」
と、居間の方から幽々子さまの声が聞こえる。あのちょっと食いしん坊で何を考えてるのか分からないお嬢様こそ、我が主、そしてここ白玉楼の主である西行寺幽々子さまである。
「心得た」
そして、今わたしの隣で手際よく調理を進めている青年。背は高く、髪は黒い。黒い着物に割烹着という、男性にしては何だか妙な格好だ。なぜか人間以外の種族は女性に偏っている幻想郷においてはとても珍しい妖怪の青年で、名はユーリと言う。ただし自身の種族など、生い立ちについては殆ど覚えていないらしい、謎の多い妖怪でもある。
「妖夢殿、みりんを取ってくれないか」
「あ、どうぞ」
とまぁたまにふらっとこの屋敷に来ては、わたしと一緒に幽々子さまに振り回されている。因みにわたしの名は魂魄妖夢。ここ白玉楼の庭師であると同時に、一応幽々子さまの剣の師匠という事になっている。真面目に稽古を受けてくれた試しがないけど。
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