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大嵐の海。
雨が鞭のように海面を打つ。
雷が止まることなく辺りを響かせる。
海にはいくつもの渦潮。
そんな海に船が2隻、並行になって浮かんでいた。
1隻は、豪華な作りで気品を漂わせる木造の客船。
もう1隻は、真っ黒な船体に、側面から数十の大砲が頭を覗かせる。
2隻の間では、轟音と同時に鉄球が飛び交い、木片を辺りに撒き散らす。時には人が肉片となり、辺りに飛散する。
「奴らの大砲だけ狙え!間違っても客室は狙うな!」
キャプテンハットを被った青年が、舵を握ったまま叫ぶ。
部下達は指示通り、的確に大砲を狙う。
客船から火が上がりはじめた頃、メインマストに白い旗があがった。
「野郎共!乗り込んで好きなだけお宝をあつめてこい!」
男達がフックのついた縄を投げ込み、客船に乗り込んで行く。
乗組員が海に飛び込んだり、拳銃で自害する。
抵抗する者は、容赦なく殺されて行った。
「はっはっはっは!大収穫だ!野郎共!撤収だ!帆を張れ!」
大嵐の中、巨大なドクロが描かれた帆が張られる。
海上で操縦士を失った船は、火に包まれ、渦潮に呑まれ姿を消した。
海賊船も笑い声を残し、荒れた海の遥か彼方に消えた。
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