第一章:カゴノナカノヒメ

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「確かめてみるか?」 それを察してか 彼女は俺の右脇に置いてあるソードを指差しながら そんな事を提案してきた 「いやいい…」 別に、彼女の話を信じているわけではないが 俺はその提案を拒否した それに対して 彼女は、そうか と 呟き話を再開する 「私も 初めはこの呪いに対して 何の懸念もなかったのだが 次第に この呪いの恐ろしさを実感していったよ 年をかさねる毎に 親しい人間は 皆、必ず私より先に死んでいった 出会いの度に 必ず別れを経験するのだ 私はこの呪いのせいで 人より沢山の死を経験してきた…」 そう 話す彼女は あまりにも淡々としていて 本当に、その苦しみを味わってきたのかと思った 「よく 人間は、自由とは、永遠だと言うことがある が 私は 永遠を押し付けられ 生という枷に捕らわれてしまったのだ 人の死を経験するほどに 私のココロはどんどん不自由になっていった 人と関わる事を 極端に恐れるようになったのだ だが やはり、人間という生き物は 誰かの温もり無しでは生きてはいけない…」 「おいっ その話と、今回の件と 何が関係してるんだよ」 俺は、そんな彼女の話が 聴くに耐えられなくなって 無理やりに話を遮った が 「まぁ 聞け」 彼女は再び話を続ける 「私は、 死を奪われた だが、ある日、そんな私でも 自由を手に入れる事ができる方法を発見したんだ その方法が わかるか?」 俺達は やはり、首を横に振る 「魂(ココロ)を破壊する事だ」 彼女は自らの胸を指差し こちらをジッと見据える 「別に身体の死を奪われたからといって 魂まで、その呪縛に捕らわれているわけではなかったのだよ ココロがなければ 死を経験する度に心を痛める事はないからな だから、 私はココロを破壊した」 背中に悪寒が走るのが感じてとれた 今まで あれだけブラックな話を淡々と話せていた理由がようやくわかった 「そして 私は、ようやく自由を手に入れることができたのだよ」 今まで 何となく 信じられなかった彼女の話が 急に真実味をおびる 「だがな…」 彼女は続ける 「殺したと思っていた私の魂(ココロ)は 実は、殺しきれていなかったのだ」 「どういう事だ?」 「魂を破壊する時 僅かに私の中に迷いがあったのだろうな 自らのココロがココロの破壊を僅かに拒んだのだ そして 私から逃れたココロは 一旦身を隠し、再び私と一つに戻る機会を見計らっているのだろう」 「! それが、さっきの子?」
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