第一章:カゴノナカノヒメ

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~~~~~~~~~~~ どこか 優雅に犇めく人々 品良くざわめく大ホール その中を 俺は 黒の正装で グラスワインを片手に 流れに沿って辺りを散策する 『あ~あ~ こちらヴィッツ 聞こえるか~』 と、 ノイズ混じりの 大層やる気のない声が 襟元に備え付けられた小型マイクから聞こえてくる 音量は 蚊の鳴く程度で 本人以外は外部の音に紛れて まず、聞こえることはないだろう… 俺はあえて返事をするような内容でもあるまいと そのまま… 『あ~の~…ま~… 多分、聞こえてまちゅね? あ~… 聞こえてんたら返事しようよ~ シカトはね、うん、良くない 良くないよ~ だから ま~とりあえず…ね~… へ~ん~じ~』 と 再びマイクが鳴る 本来なら 二、三、文句を言ってやりたいところではあるが 場面柄、オレはそれに対し 指で二回マイクをはじいて返事をする 「あら、セドリック様 どうなさいましたの? 急に怖い顔をしてしまって…」 燃えるような赤髪に猫のような尖った三角の耳の 煌びやかな衣服の女性が心配そうに此方を覗き込んでいた 「人を呼んで参りましょうか? もし 気分が優れないのでしたら…」 俺はすかさず 「いえ 慣れない場に緊張してしまって」 「あぁ わかります、私(ワタクシ)もこういった場面は初めてで… 何か粗相をしてしまわないか今もびくびくしと…してます」 赤髪の女も若干すがるように同意してきた が、勿論こんな所でこの女と田舎話をしている余裕なんて俺には無い 「あははっ では僕は少し端の方で休んできますね」 俺は 繕った笑顔で返事を返すと逃げるように壁際に向かう そりゃあ ブツブツ独り言を話したり ましてや声を荒げたりしたら まぁ…注目の的…だよな… 『あ~…の~… 聞こえてんなら~…』 また… コイツは…! 「ウッセェな! 合図したろ! 空気読めや!」 襟元を掴み 極力マイクを口に近づけ 精一杯の小声で声の主に怒声を飛ばす 『え? ウソォ?いつ?いつ?』 「いつでも良いだろ! つか、声だせねんだから…」 『あ~…』 ……。 コイツは… 拳を固めるも 先ほどの女性と目が合い 慌てて拳を緩め、笑顔で会釈 あ~… ストレス溜まるわ~… 「で? この後の指示は?」 腕組みしながら 壁にもたれ 少しだけの力を抜いてみる… まぁ 気休めにもならなんけどな
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