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ヴィッツは
よく、一人称を“先生”と称す
こいつは昔、グワヴァルァに入る前
このラスタリアで
かなり名の知れた名医だったらしい
ビーストではあるが
下民は勿論、貴族や王族からの信頼もあり
それなりの地位も名誉もあったと言っていた
そんなヴィッツが
現在はグワヴァルァの下っ端
今やコイツを先生と称すのは
その本人のみ…
前に此処に来た理由をきいた事があったが
軽い冗談で流されてしまった…
まぁ
昔話がウソか本当かは俺は知らないし…
興味も無い
ははっ
ひどい話だ
さて
今回の任務は
先ほども言ったように
人員は下っ端…しかも最低限の人数で行われている
メンバーは
俺(セドリック-スノウ)、司令補佐官(ヴィッツ)、司令官(詳細不明)
今でこそヴィッツが加わっているが
当初ではこの大プロジェクトの執行人は俺だけで
「まぁ
別に、絶対成功させなければいけない任務じゃないし
下っ端なら切り捨てても大丈夫だしさぁ~」
ははっ
全くもってひどい話だ…
「大丈夫大丈夫~
結局は僕がいるわけだしさぁ~」
とは言っても2人…
それ以前に
そもそも司令官様の詳細が不明ってのもひっかかる
「え?
司令官様?
あ~、すごい人だよ~」
「すごい人?」
ヴィッツの言葉に俺は足を止め気持ち視線を後ろへ向ける
が
狭すぎて、そして暗すぎて
その姿を目でとらえる事はできなかった
「うん
すごい人
グワヴァルァの人じゃないんだけどさぁ~」
相変わらずの呑気な声で
ヴィッツはこたえる
「どういう事だ?」
「何かさ~
あんなにスッゴい人なのに
この任務の為にわざわざ着てくれたんだって~」
何一つ情報が増えていない…
「いや
何か、この任務を持ちかけきたのもあの人らしいよ~」
「だから結局誰なんだよ!!」
叫んでハッとする
後ろからシィーっという空気を吐く音が聴こえてきた
原因はお前だろうに…!
「で…?」
俺は深呼吸の後に
静かに問いた
「……――魔女、ジェーミア。」
それは
決して大きな声では無かったけれど
静かすぎた通気管に
それは妙に響いて…
「ジェー…ミア…?」
俺は目を見開きその場で固まってしまった
「ですよね?司令官様?」
その空気を断ち切るよう
やっぱりいつもの呑気な声が響く
と
『あぁ。』
襟元のマイクから
ひどく透き通った、透明な声が
再び
その空気を呼び戻す
『私が、当任務の司令官にして依頼仲介人のジェーミア=シャドゥだ
以後、宜しく頼む』
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