第一章:カゴノナカノヒメ

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ヴィッツは よく、一人称を“先生”と称す こいつは昔、グワヴァルァに入る前 このラスタリアで かなり名の知れた名医だったらしい ビーストではあるが 下民は勿論、貴族や王族からの信頼もあり それなりの地位も名誉もあったと言っていた そんなヴィッツが 現在はグワヴァルァの下っ端 今やコイツを先生と称すのは その本人のみ… 前に此処に来た理由をきいた事があったが 軽い冗談で流されてしまった… まぁ 昔話がウソか本当かは俺は知らないし… 興味も無い ははっ ひどい話だ さて 今回の任務は 先ほども言ったように 人員は下っ端…しかも最低限の人数で行われている メンバーは 俺(セドリック-スノウ)、司令補佐官(ヴィッツ)、司令官(詳細不明) 今でこそヴィッツが加わっているが 当初ではこの大プロジェクトの執行人は俺だけで 「まぁ 別に、絶対成功させなければいけない任務じゃないし 下っ端なら切り捨てても大丈夫だしさぁ~」 ははっ 全くもってひどい話だ… 「大丈夫大丈夫~ 結局は僕がいるわけだしさぁ~」 とは言っても2人… それ以前に そもそも司令官様の詳細が不明ってのもひっかかる 「え? 司令官様? あ~、すごい人だよ~」 「すごい人?」 ヴィッツの言葉に俺は足を止め気持ち視線を後ろへ向ける が 狭すぎて、そして暗すぎて その姿を目でとらえる事はできなかった 「うん すごい人 グワヴァルァの人じゃないんだけどさぁ~」 相変わらずの呑気な声で ヴィッツはこたえる 「どういう事だ?」 「何かさ~ あんなにスッゴい人なのに この任務の為にわざわざ着てくれたんだって~」 何一つ情報が増えていない… 「いや 何か、この任務を持ちかけきたのもあの人らしいよ~」 「だから結局誰なんだよ!!」 叫んでハッとする 後ろからシィーっという空気を吐く音が聴こえてきた 原因はお前だろうに…! 「で…?」 俺は深呼吸の後に 静かに問いた 「……――魔女、ジェーミア。」 それは 決して大きな声では無かったけれど 静かすぎた通気管に それは妙に響いて… 「ジェー…ミア…?」 俺は目を見開きその場で固まってしまった 「ですよね?司令官様?」 その空気を断ち切るよう やっぱりいつもの呑気な声が響く と 『あぁ。』 襟元のマイクから ひどく透き通った、透明な声が 再び その空気を呼び戻す 『私が、当任務の司令官にして依頼仲介人のジェーミア=シャドゥだ 以後、宜しく頼む』
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