欠落アダプター

指先。

食器を洗った後に江梨子さんに「もう少しいたら？」と言われたが、宿題と明日の予習をしないといけないと告げて、私は自宅へ戻った。

ふらふらと部屋に入って、鞄から宿題を取り出してやったがいつもより時間がかかるのが目に見えて分かった。……集中できない。私はシャーペンを投げるように置いた。

微妙な空気のまま逃げるように帰ってきたことを後悔して、ため息をついた。
何やってんだ。もう誘われなくなったりしたらどうしよう。取り乱しすぎた。明日か明後日改めて謝ろう。

「あー……ばかばかばか」

今日の夕方のことが嘘のことみたいに感じた。二人きりになること自体、久しぶりだった。