傍ら。

12/15
前へ
/195ページ
次へ
私に詰め寄ろうとする永至の肩を押さえて、ケンさんが間に入ってきた。永至は険しい顔つきで数秒ケンさんを凝視したあと、ぺこりと頭を下げた。 「会話成り立ってないっつうかなんつうか……心配だよ君たち」 ケンさんは肩をがっくりと落とす仕草をして言うと、永至はますます顔をしかめた。私も何のことだか分からない。会話になってたと思うんだけど。さっきの会話を頭の中で反芻していたら、ケンさんが口を開いた。 「永至」 「……はい」 「未来ちゃんを誘ってソフトクリーム食べるの付き合ってもらったんだ。ほら、成人の男がここで一人アイス食うなんて気が引けるじゃんか」 永至は黙って頷く。ケンさんは、じゃあ帰るな、と言い「未来ちゃんお土産ありがとう」「はいっ!さようなら」歩き出した。しかし、数歩進んだところで何かに気付いたようにくるりとこちらを向き、 「あぁそうだ。永至!夏休みのこと、未来ちゃんにちゃーんと言っといたから!」 それはそれは意地悪そうな笑みを浮かべて言うと、また私達に背を向けて歩き出した。 「は!?ま、待ってください。ちゃ、ちゃんとってなんすか!つうか、あれは――っ」 永至は焦ったように叫んだがケンさんがこちらを向くことはなく、ひでぇ、と呟いた。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加