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私に詰め寄ろうとする永至の肩を押さえて、ケンさんが間に入ってきた。永至は険しい顔つきで数秒ケンさんを凝視したあと、ぺこりと頭を下げた。
「会話成り立ってないっつうかなんつうか……心配だよ君たち」
ケンさんは肩をがっくりと落とす仕草をして言うと、永至はますます顔をしかめた。私も何のことだか分からない。会話になってたと思うんだけど。さっきの会話を頭の中で反芻していたら、ケンさんが口を開いた。
「永至」
「……はい」
「未来ちゃんを誘ってソフトクリーム食べるの付き合ってもらったんだ。ほら、成人の男がここで一人アイス食うなんて気が引けるじゃんか」
永至は黙って頷く。ケンさんは、じゃあ帰るな、と言い「未来ちゃんお土産ありがとう」「はいっ!さようなら」歩き出した。しかし、数歩進んだところで何かに気付いたようにくるりとこちらを向き、
「あぁそうだ。永至!夏休みのこと、未来ちゃんにちゃーんと言っといたから!」
それはそれは意地悪そうな笑みを浮かべて言うと、また私達に背を向けて歩き出した。
「は!?ま、待ってください。ちゃ、ちゃんとってなんすか!つうか、あれは――っ」
永至は焦ったように叫んだがケンさんがこちらを向くことはなく、ひでぇ、と呟いた。
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