扉。

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しばらく歩いて、永至は立ち止まると同時に私の腕を放した。放された腕を咄嗟に後ろへ隠す。まだ熱を持ってる腕。 永至は少し困ったような笑みを浮かべて「買い物行くんだったな。行くか」と言った。私は頷くことしか出来なかった。 スーパーに入って食材やら調味料やらを買っていく。買い物かごを持つ永至と一緒歩くのは、すごく変な感じだった。何を買おうとしたのか忘れてしまって、思い出しては戻って食材を手にした。おかげで買い物の時間がいつも以上にかかった。 「ごめんね。時間かかった」 「いや別に大丈夫。ていうか毎日こんな荷物運んでるのか?」 「毎日じゃないけど……まあ、週に何回かはね」 買い物袋を持ち上げる永至は眉をしかめて「重いだろ」「まあ、でもそこまでは」「……無理すんなよ」ふらふらと先に歩き出した。 買い物で無理することはないけど。時々永至はよく分からない。言葉が少ないというか何というか。
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