魔術の授業2《守護魔術》

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火球を発動させるだけなのに、緊張してるのが自分でも分かる そりゃそうだ 初級と言えど、授業で発動するのは初めてだし 着力を手加減する…これもやったことがない 落ち着け、できるはずだ 俺は右手を前に出す 彼女のレベルで詠唱したら、逆に怪しまれるかもしれない 無詠唱の方がいいか… 見た所、発動をてこずってた奴はいなかったから、初級はいいだろう 俺は想像するレベルを目指して、慎重に魔力を練り上げる ボッ 調度手の平サイズ、拳2つ分ぐらいの火球を発動した 瞬間、視線を感じた 明らかに、自分に向けられた視線… それがエルバ先生のものだと、すぐ気付いた まとわりつくような視線に焦る マズったか? 上手くやり過ぎたのか? いや、彼女の着力はこれぐらいのはず…だろ? 想像通り…できてないか? 「もういいですよ」 エルバ先生が終了の合図を出す 俺は火球を転がすように手の平を反転させて拳を握り締めて消した 俺以外の奴が消滅させたのを確認して、エルバ先生はボードに書き込んでから言う 「何も言うことはありません」 「引き出してすぐが乱れます、集中を切らさないように」 「発動後が揺れますね。注意するように」 俺がかけられたのは最初の言葉 複雑な心境だった 『何も言うことはない』とは、助言や注意点がないって意味だろう 褒め言葉だ 他の奴等が騒いだり、視線を感じない辺り、エルバ先生の淡々とした言い方から…褒め言葉とは取ってないみたいで良かった もし、エルバ先生がルナエラ先生みいな人だったなら、オーバーな表現というか… 『すごいわ!』とか言われた瞬間、注目の的だったろう それを思えばエルバ先生の言い方に感謝だ 褒められるのも悪くない 正直、嬉しかった …だが、不安が残る エルバ先生が俺の着力をどう捉えたのか…どうにも判断がつかない
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