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「直線を使ったんだ」
「直線?」
頭は切れるが説明がへたくそだ。
仁科は田島が何を言いたいのかすぐに理解できずに首をかしげた。
「直線だよ。ロープ、死体、窓。これらはみんな直線上にあっただろう」
わからないかな、と困った顔で田島が続ける。
「まず、女房は俺に睡眠薬を飲ませて、眠ったところで玄関まで運んでおく。死体はドアによりかかるようにして座らせたはずだ」
「まだ死んでませんよ」
仁科の的確なつっこみに、「ああそうか」と田島は頭をかいた。
「眠った俺をドアに寄りかかるようにして座らせたら、ロープを首に巻いておく。
ロープの長さが少し長かったのは、その場で死なれては困るからだ。
座っても締まらないくらいの長さが必要だった」
言葉を切って、田島が仁科の飲みかけのレギュラーコーヒーをひったくってのどを潤した。
自分のコーヒーは飲み干してしまったらしい。
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