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思いがけない田島の言葉に、仁科は驚く。
「駄目だろ。よく考えてみろよ。座らせた状態でドアを引いたら、上半身の長さ以上に引っ張らないと首は絞まらないだろう。
つまり、上半身の長さ分は開いてしまう。
その時点で管理人に気づかれるだろう」
「ああ」
確かに。
(良い案だと思ったのに)
仁科は残念そうに苦笑した。
「だいたい、死ぬ間際の声が聞こえなかったらどうなるんだ。
女房のアリバイ作りのためのトリックが台無しだ。
熟睡していて声も出さずに死んじまうかも知れねえぞ。
足のひもだって、管理人に気づかれる可能性だってあった。お前な」
にやり、と笑って田島が言った。
「ツメが甘えんだよ」
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