僕の父を紹介します

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僕の父を紹介します

うちの父は真面目で寡黙な人です。 父にはいくつか名言があります。 「男が人生で泣けるのは三度まで」 1、産まれたとき 2、母親が死んだとき 3、本当に悔しいとき… …いい言葉です。 例え酒を飲んで一時間の間にこの話を三回されようが、いい言葉です。 例え父の部屋のソファの隙間にエロ本やAVが隠されていたとしても、いい言葉です。 例えそれが女子高生ものだったとしても、いい言葉です。 …ごめんよパピー それを見つけたとき、オレ、姉も呼んで二人で笑ってたんだ… でも… その中にはなぜかオレのやつも… さてと、父の恥とともにオレの恥もさらしてしまったわけですが… 小学生の頃、父と二人で雪山にスキーに行きました。 なにを思ったか、父とオレは上級者コースへ行ってしまいました。 不安がるオレを見て、父が「オレにまかせとけ」みたいなことを言ってたので、安心しました。 「オレがまず先に行く。お前はゆっくり来い」 そう言って、颯爽と滑り降りて行った父の背中は、とても大きいものでした。 オレがボーゲンでゆっくり滑り降りてると、カーブのとこで網に絡まって倒れてる人が いました。 あー、特に上級者でもないのに頑張っちゃった人がいるんだなぁと思い、見てました。 …父でした。 さっき、最高にかっこよく滑り降りた父が、そこにいました。 たぶん、オレは小さい声で「うそーん」と言ってたかもしれません。 オレが近付くと、父が叫びました。 「オレに構うな先に行け!」 …フツーならかっこいいかんじの言葉な気がします。 数十分後、父が足をひきずりなが降りてきました。 帰りの車の中、オレは小学生にして「気を遣う」ということを覚えました。 ちなみに父は婿養子で、母より七つ下です。 普段オレになにも言わない父に、「婿養子にだけはなるな」と言われました。 …なんとなくわかります。 …お疲れ様です。 まぁ、なんだかんだでオレは父を尊敬しています。 ただ、父と全く同じような父親になりたいかと言われれば… …そうでもありません。 …ごめんよ、パピー
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