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イヨ子は古き良き時代の女です。
今年で傘寿を迎えます。
…傘寿の意味はあまりわかりませんが
しかし、
年寄りの言葉には重みがあるものですね。
一言一言に積み重ねてきた時代の重さを感じます。
例１
「便利な世の中になったねぇ
昔は我慢に我慢を重ねてたのに…」
…そう言いながら
…巧みに
…エアコンを操るおばあちゃん
エアコンがおばあちゃんの手の平で踊っています。
エ「止めろ！
温度調整をスムーズに行うな！
昭和初期生まれのくせに…
あ…
そんな…
風量調節まで…
オレの…
負けだ…」
ある意味オレも負けました。
例２
「裕福な世の中になったねぇ
昔は食べるものがなくて…」
…そう言いながら
…レストランで
…迷うことなく
…ミックスグリルを注文するおばあちゃん
ハンバーグとチキンソテーとポークソテーの三種の神器が奏でるハーモニー
決して欲張りなわけではありません。
時代の流れがそうさせたのです。
時のな～がれ～♪
いつ～でも～♪
…さてと
食べ終えて満足そうなおばあちゃん
そして一言
「デザートは？」
ある意味オレの負けです。
例３
「ほんと便利な世の中になったねぇ
昔は大体歩いて…」
そう言いながら…
オレの車に…
颯爽と乗り込むおばあちゃん…
後部座席から視線感じる。
イヨ子が見てる。
やはり後部座席から視線を感じる。
やはりイヨ子が見てる。
オレを見てるイヨ子をバックミラー越しに見てるオレ
馴れ合いを求めるオレ
新鮮さ求めるイヨ子
イヨ子はオレのために
なのにオレはオレのため
…さてと
孫の車に乗れて嬉しいのかわからないが、
見すぎです。
まるで監視してるように…
イ「ほらほら、こんなんじゃ亀にも追い越されるよ」
俺「くっ」
イ「アクセルの踏み込みが甘い！
そんなんで峠を制することができると思ってんのか！」
俺「はぁはぁ」
イ「わたしを超えてみろ」
ある意味オレの負けです。
すでに勝つ気もしません。
時代にも
イヨ子にも
負けました
せめて亀には勝ちたいです。
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