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少しずつ空気が張り詰めてくる。
しかし少年は、どこか上の空だった。
古いアパートの一階。
目的の一室、そのドアの前で、先を歩いていた男が立ち止まる。
二人とも帯剣していた。
着ているジャケットは、耐刃繊維でできているものである。
明らかに戦闘を意識している格好だった。
男が振り返り、小さく頷き合図する。
ぼんやりしていた少年は、いくらか反応が遅れた。
慌てて頷き返す。
男が訝し気な顔をした。
「しっかりしろよ、おい」
「ああ、わかってる。大丈夫だ」
そんなやり取りの後、男はドアをノックした。
返事はない。
だが、室内でなにかが動く気配はした。
再び、ノック。
今度は返事があった。
「……誰だ?」
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