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「ーーまずはここ! この私、アイが見つけた、『幸運の水面(みなも)』だよ!」
「幸運の水面・・・あ!」
アイが指差すのは、ネオ・ヴェネツィアに佇む建物と建物の間にさしていた日光だった。
「すごい・・・ハートになってる」
建物の屋根が光を遮るなか、水面にただ一点だけ、ハート型に光が満ちていた。
「ずごい、すごいよアイちゃん!」
「えっへん。そうでしょそうでしょー。ここはね、私がネオ・ヴェネツィアにきて初めて自分で見つけた場所なんだよ。本当は早朝にくるのが一番いいんだけど、時間が時間だから」
「じゃあ今度みんなでくるか!」
「愛梨じゃあ早起きはキツイでしょ?」
「じゃあって何さ、じゃあって! あたしにはあの鬼先輩がいつも叩き起こしにーー」
「誰が鬼先輩だって?」
「うわぁ! あ、藍華先輩!?」
愛梨たちのゴンドラの後ろに、白く輝いたゴンドラに乗るウンディーネがいた。
(この人が、藍華さん・・・)
ネオ・ヴェネツィアの観光案内ガイドにも掲載される、水先案内人の頂点である『水の三大妖精』が一人、藍華・S・グランチェスタその人である。
「で、誰が鬼先輩だって?」
「あはははは。い、いやぁ・・・そ、それより! 藍華先輩どうしたんすか一体、こんなところで」
眉をひそめていた藍華だったが、それ以上は追及しなかった。
「お客様の都合で午後の仕事がキャンセルになったから、新しく来たARIAカンパニーの社員を連れ添ってるっていう愛梨たちを探しに来たのよ」
「へぇーそうだったんすか。でもどうしてっすか?」
「進入社員の歓迎会を開こうって灯里たちと相談して、今日に決めてたのよ。ちょうど私たち三人の都合がつくし、どうせあんたたちも暇だろうし」
「暇だろうって、けっこう酷いっすよ」
「そ・れ・よ・り・も!」
しばらく聞き側だったアクアのほうに、藍華は向き直った。
「あなたがアクア・マリナね」
「は、はい! はじめまして、アクア・マリナです!」
「良い返事よ、どっかの誰かさんと違って」
「誰っすかねー」
「あんたのことよ」
ペシッ! と、藍華は愛梨の頭を叩いた。
「あの、そういえば愛梨の先輩って・・・」
「そうよ、愛梨の先輩は偉大なるこの私、藍華・S・グランチェスタよ!」
「さすが藍華先輩、まさに唯我独尊って感じっすね」
「・・・それ誉めてるの?」
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