序章

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1  静かな夜。空には満月が浮かび、円形都市“グランデア”を浮かび上がらせていた。西のはずれにある古城、そこは五人の選ばれし統治者“グラン”直属の部隊“リヴラ”の本拠地となっている。  古城の東側三階バルコニーにその男は立っていた。短い黒髪を無造作に立て、制服である黒いダブルジャケットを羽織っている。右手にはタバコ、左手にはワイングラスを持ち、月明かりに照らされているグランデアを眺めていた。男の名前はレキ。リヴラの現隊長である。  一日の終わりにここから街を見下ろすのが、レキの日課となっている。昔ながらの煉瓦や石作りの建築と近代的な建造物がバランスよく立ち並び、狂いなく整備されている美しい都市、それを護る使命を担っていると自分自身に刻み込んでいるのだ。
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