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〔1〕
魔物は楽しそうに間(ハザマ)の国で獲物を探す。
黒い身体は、暗闇に溶け込み。
人間が通りかかるのを微笑を堪えて目を光らせる。
「ミー♪ ツケター♪」
魔物が見つけたのは夜道を歩く1人の少女。
獲物を見つけた魔物は不気味に動き出す。
不気味な騒めきは少女の耳にも届く。
「人間 ミーツケタ!!」
魔物のは、暗闇から出ると少女の喉元に食らい付こうとする。
月明かりに照らされて、魔物の姿がはっきりと見える。
魔物は、黒い肌でオオカミのような形をしている。
形はオオカミでも、その皮膚に毛皮はなく。
黒い肌はしわ1つなく1枚の皮から出来ている。
言葉は聞こえるといいよりは、頭に直接流れ込んでくるといった方が近い。
バキッ″
魔物が少女に噛み付こうと瞬間に突然衝撃が襲う。
「獲物は貴方の方よ」
闇の中に聞こえる声は、鳥のように美しく。
とても、冷淡で落ち着いていた。
魔物の身体には無数の鋭い針のような突き刺さる。
それは、少女から放たれたものだった。
「キサマハ ダレダ!!」
「その羽根を見ても気付かない?」
魔物は自分の身体に突き刺さる針を見る。
それは、魔物の身体より更に漆黒の羽根だった。
この世界で羽根をもつ生き物はただ1つ。
「貴方の罪を粛清しに来たの。
間の国で人間と動物の命を奪った罪を。」
「キサマハ 天使カ!?」
その答を聞いて少女はため息をつく。
「その呼び方‥。私、嫌いなの」
「まぁ、いい」と一瞬暗い顔をしてから、元の表情へ戻す。
少女は魔物の身体に一度触ると、風に想いを乗せる。
「どうか、優しい神の元へと‥。」
そう呟くように唄うと魔物はゆっくりと消えて行った。
風はいつの間にか止んでいた。
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