34人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところで」
不意に愛凪は本来の目的を思い出して尋ねる。
「メティス伯爵の居場所知らない?」
それは棗が探していた魔族の男の名だった。
「数日前から似たような気配を追ってるんだけど、全部違ったの」
愛凪と鉢合わせになったのは、彼女も魔族の気配を片っ端から探っていたかららしい。
「知らない。」
知って至ら、すでに自分は伯爵の元へ行っていただろう。
“メティス伯爵”
それは、最近この地を襲いだした魔物の主。
魔族の中でも術士の伯爵と棗の戦い方は相性が悪く。
見つけても“今の”彼では勝てる保証はない。
伯爵が現れるのは“家族”の近くで棗の戦い方から皆を巻き込まない為には、放れた場所か力を押さえて戦うしかない。
ギン″
突然に身体に圧力(プレッシャー)がかかる。
「「?!」」
ゴゴッー″
音を立てて、地面が揺れ始める。
「伯爵の気配‥!!」
愛凪は声を張り上げると走り出す。
「待て!!」
腕を掴んで止めようとしたが予想以上に彼女の動きは俊敏で捕えることは出来なかった。
「混血の天使が1人で魔族に適う筈がないだろう!」
混血の天使は、普通の天使と比べるとその力は極端に低い。
その身に流れる他の種族の血が天使の力を押さえ付けるのだ。
彼女も混血なのだから、魔族の伯爵に1人で挑むのは自傷行為と言っていいだろう。
「大丈夫、私は特別な混血だから‥。
心配してくれてありがとう」
僅かに微笑むと、愛凪は聞く耳を持たず、闇の中に消えた。
「っっ‥」
棗も急いでその後を追う。
“混血”を見捨てるわけにはいかない。
それが彼の信念。
どんな種族との混血であろうともその信念は揺るがない。
「間に合ってくれよ‥。」
必死に足を動かした。
--
最初のコメントを投稿しよう!