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ビクトールはリオウの顔を覗きこむ。
笑ってはいるが、リオウにはやはり熊にしか見えない。
「お前、都市同盟に襲われたって事は、ハイランドの人間だな。
ここは、都市同盟の領地で、しかも、俺達はミューズ市に雇われた傭兵だ」
言っている意味はわかるだろう?
そう言っているのだ。
ミューズ市は都市同盟の盟主がいる。
首都みたいなものだ。
捕虜として捕らえると言うことだろう。
「まぁあまり心配するな。
悪いようにはしねぇから。」
ビクトールは笑みを深めてそう言った。
悪い人ではなさそうだ。
リオウはそう思いながら、ビクトールの言葉にうなずいた。
****************
地下牢に人が入った。
それはこの砦では初めてのことだ。
どんな凶暴な奴だろうと思っていたら、少年だった。
そして、捕虜だというその少年の面倒をみなければならなかった。
あまり、自分と年が変わらなさそうだと、ポールは思った。
ビクトールには、「一応、捕虜」と言われている。
地下牢に下りて、少年のいる房の前にきた。
地下牢と言っても、ジメジメした暗い場所ではなく、明るく風通しも良い。
牢のほかに加治屋と倉庫がある。
倉庫番のバーバラさんは、この砦お母さんみたいな人だ。何かとよく自分達の面倒をみてくれる。
少年とは友達になれれば良い。
ポールはそんな事を考えた。
この砦には自分と近い年の人間はいない。
「よう」
柵ごしに声をかけた。
「俺はポール、おまえさんの世話役になった」
気軽にそう言うと相手は頷いた。
「おまえさん、名前は?」
「リオウ……」
「リオウか、よしリオウ!
とりあえず明日からおまえさんは、この砦の雑用をしてもらう。
よろしくな!!」
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