第四章「故郷へ」

2/8
前へ
/208ページ
次へ
捕虜となって、三日が過ぎた。 砦の中ならば自由に動き回っても良いと言われた。 寝る所は牢屋だが、それもポールが気をきかせて、快適とは言えないまでもそれなりにはしてくれた。 午前は起きて朝食をとり、砦の雑用をポールと一緒に取り組み、午後は自由と言った具合だった。 ポールは雑用をこなしている合間に、この砦の事、決まり事、自分の生い立ちなどを語ってくれた。 戦災孤児だというポールは、ビクトールに拾ってもらったといっていた。 拾ってもらって、自分は幸せものだとも言っていた。 自分も一緒だ。 ゲンカクに拾われていなければ……。 そういえば、ナナミは今頃なにをしているのだろう。 この生活にも慣れてきたせいか、冷静に他の所に最近思考がとびがちだ。 ジョウイの事も気になる。 自分が生きていたのだから、ジョウイも生きている可能性が高い。 明日あたりにでも詳しく事情を説明して探し出したい。 まずポールに話をして、ビクトールに話しをとうしてなんとかしよう。 そう作業をしながら考えた。 「ポール、午後から時間があるかい?」 もうポールとリオウはもう友達だった。 「あぁ、昼からなら暇だけど……何かようか?」 「うん、レオナさんの所で昼飯でも食べながら話すよ」 「わかった」 そう言って、ポールとしていた作業を終えてひとまず牢屋の方に戻った。 ポールは今日の作業の報告書を書くらしい。 ****************** 国境近くに兵を出してはいない。 そうミューズにたてた使者は返事を持ってきた。 同時に、ハイランド国内では都市同盟が少年兵らを皆殺しにした。 という報告がされ、国民を戦争へと駆り立てているらしい。 「自作自演か……」 フリックはつぶやいた。 情報を全て統合するとそう言うシナリオが浮かぶ。 「噂に聞く狂皇子のしわざだろうな。 まぁ、どっちにしろ俺達の働く場面が出てきたって事だ」 ビクトールが机に足をかけて言った。 「そうだな、お偉いさん達にタダ飯ぐらいなんて言われないためにもな」 フリックはそう返して机に散らばる書類を見た。 こういう仕事はビクトールの仕事だが、ビクトールはやりたがらない。 自分の砦なのにだ。 ミューズ市の市長と幼なじみらしいビクトールは、腹が減ったから金を貸せと言ったら、砦をくれたと言っていた。 自分はその場にいなかったから、本当かは知らないが幼なじみだと言うのは本当らしい。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加