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フリックが書類に目を通していると、ノックの音が聞こえたので、返事をした。
「入って良いぞ」
その声でビクトールのよだれをすする音が聞こえた。
あの短時間に寝ていたのか……。
気楽なやつめ……。
心の中で苦笑する。
ドアを開けたのは、ポールだった。
ポールは今日の報告書をだしにきたはずだ。
「おう、もうそんな時間か」
ビクトールはそう言うと部屋をでていった。
ポールがくるのはいつも夕方なので、その時間帯からビクトールはレオナの所で酒を飲んでいる。
フリックはあまり酒に良い思い出はないので、飲みはするが少しだ。
「報告書か?」
「はい、それともうひとつ……」
ポールは言いにくそうに報告書を渡してきた。
「なんだ?」
報告書を受取りながら尋ねると、ポールは困ったような顔を浮かべた。
***********************
戦の気配が近づいてきた。
戦時ではない今は人手は余るほどだ。
しかし、ひとたび戦が始まると人手は足りない。
今のうちに人手を増やしておかなくては間に合わなくなる。
近くの村を周り募兵をするか……。
そう酒の入ったグラスを片手にビクトールは考えていた。
戦の事を考えるのは好きだった。
酒の肴だともいって良い。
「ビクトール」
フリックが隣に座ってきた。
もう書類の整理は終わったのだろう。
フリックはあまり酒を過ごさない。
フリックは酒で失敗はしたことは無いはずだ。
しかし、フリックが酒を飲んでいると、女が寄ってくる。
ここまでは良いのだが、何故か寄ってくる女が全員酒豪か酒乱なのだ。
フリックはそのせいで少し臆病になっているのだ。
それに、フリックはまだアイツの事を忘れてねぇんだろうな。
ビクトールは心の中でつぶやいた。
「ビクトール、さっきポールからリオウの事で相談を受けた」
レオナから酒を貰いながらフリックは言った。
「どんな?」
「滝から落ちたのはリオウだけじゃ無いらしい。
リオウの友達らしいが、もしかしたら生きているかもしれない……」
「だから、探してくれってか?」
「あぁ、探すようなら一緒にリオウも探したいとさ」
「リオウを連れて回るのは、ちと無理があるが探すだけならなんとかなる。
ちょうど、募兵をしようと思っていたところだ」
リオウは「とりあえず」捕虜だ。
だから、あまり出歩かない方が良い。
近くの村や街にはそのことは噂として広がっているはずだ。
ハイランド人として迫害を受けかねない。
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