第一章「始まりの夜」

2/3
前へ
/208ページ
次へ
「眠れないのかい?リオウ」 ジョウイは、リオウを見つめ聞いた。 二人は、同じキャロの町の出身の幼なじみで、幼い頃から共に遊び学んできた。 「あぁ、明日キャロに帰れると思うと……」 そう、故郷に帰れる。 二人がいる、ユニコーン隊は王国に属している少年兵だけの部隊で、王国と都市同盟の国境近くにある山道に駐屯している。 そして、その王国と都市同盟が休戦協定を結び、長らく続いた争いは終息した。 兵役をとかれ、故郷に帰れるのだ。 「ふふ、僕もさ、ナナミ元気にしているかなぁ……」 ナナミは、リオウの姉である。 ナナミはいつも優しく、二人を見守ってくれていた。 「あぁ、じいちゃんの墓参りをしながら僕らの帰り待っているさ……」 ゲンカク……。 リオウとナナミの育ての親。 時に厳しく、時に優しく育ててくれた。 武術はゲンカクに習った。 幼い頃、リオウとナナミが稽古をしているのを、のぞき見していたのが、ジョウイだった。 そして、ジョウイも、稽古に加わるようになり、いつしか、リオウとジョウイは友になった。 「さて明日のためにも、そろそろ寝るとしようか?」 このテントの中にいる後の二人はもう寝ている。 この二人は帰れるのは、四日後だ。 「あぁ、寝ないと隊長にどやされる」 そう二人で笑いあい、眠りについた。 夜が更けていく。 聞こえてくる歩哨の呼び交わす声は、だんだんと遠くなっていった。 **************
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加