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リオウ達とは街の手前で別れた。
ハイランド領での興行は何度か行ったことがあるので、村や街の位置はだいたいわかる。
少しアイリは寂しそうだ。
リィナは歩きながらアイリをちらりとみた。
やはり、アイリはリオウと別れるのが辛かったのだろう。
こういう時、自分は姉としてふがいない気持ちになる。
どういう言葉をかければ良いのかわらかない。
ちゃかして笑い話にでもしたらいいのか。
それとも一緒に悲しんであげれば良いのか。
ごめんなさい、アイリ。
心のなかで謝る事しか出来ないリィナだった。
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街に入りジョウイと別れた。
ジョウイも自分の家に行くようだ。
ジョウイは簡単に言えば「良い所のお坊ちゃん」だ。
アトレイド家の跡取りなのだそうだ。
自分とは身分が違いすぎる。
そんなことは考えもしなかった。
友達なのだ。
考えるまでもない。
リオウは自分の家のある街の端っこまで走った。
家は道場で今はナナミがいるはずだ。
道場が見えてきた。
道場の中に駆け込んで辺りを確認する。
いない。
ナナミはどこだろう。
裏庭に出てみた。
いた。
ナナミは墓前でかがんで、手を合わせていた。
物音にきずいたのか、こちらをみる。「ただいま」
リオウは息をきらしながら言った。
ナナミが飛び付いてきた。
「心配したんだからね!!」
ナナミはリオウを地面に押し倒して、首根っこをつかみ揺さぶった。
ナナミは昔から少し乱暴だ。
「今、あんた達反逆罪で追われてるんだよ!!
たぶんだけど!」
リオウはナナミに、揺さぶられ続けていたのでなにも答えられない。
「あっ!!ジョウイは!?無事なんでしょ!?」
「ナ、ナナミ、苦しい……」
ようやくリオウは言った。
それにきずいたナナミは、リオウから下りた。
「リオウ逃げよう」
落ち着いたナナミは小さな声で言った。
「この街を離れて、他の所に行こう。
じゃないと、リオウが捕まっちゃう」
「でも、ジョウイが……」
「ジョウイも一緒よ!!
当たり前じゃない!!」
「う、うん」
リオウはナナミの迫力に気圧された。
「さぁ、じいちゃんに手を合わせて。
じいちゃん、私達ここを離れるわ」
ナナミはゲンカクの墓の前でかがんで手を合わせた。
「僕達の事見守ってて……」
リオウもそれにならい、手を合わせる。
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