第二章「約束」

2/4
前へ
/208ページ
次へ
火の手は、消していた。 少年兵は、森に潜んでいる都市同盟の兵装をした兵士に襲われているはずだ。 都市同盟が協定を破り、少年兵を虐殺した。 そのシナリオが自分にとって、必要だった。 出世のためだ悪く思うな。 心の中で、ラウドは呟いた。 「これで、国がまた戦に向きはじめる。 親父が余計なことをしなければ、こんな事をしなくても良かったものを……」 ラウドの隣で、不気味な笑みをたたえたルカが言った。 ルカ・ブライト。 ハイランド皇国の皇子。 狂皇子とも呼ばれていて、その残虐性をかくそうともしていない。 「皇子、これで私は出世できるんで……?」 そうラウドが言いかけた瞬間、首元に剣先が触れていた。 ルカが剣を抜いた。 その事を確認したと同時に恐怖が襲い動けなくなった。 「あぁ、一軍を率いらせてやる、お前の実力では荷が重い程だ。 せいぜい、手持ち無沙汰にならぬようにな。 それと、皇子と呼ぶのを止めろ。 今度そう呼んだら、お前の首を胴から切り離してやる」 「は、はい」 震えた声で答えていた。 まだ体が硬直している。 皇子は、いやルカ・ブライトは魔物だ。 この魔物の近くにいれば、よい餌が食える。 ラウドはそう恐怖しながら思っていた。 ************************** 二人の会話でだいたいの話は読めた。 自分達は、隊長に裏切られたのだ。 駐屯地まで戻ってきたリオウ達は、人影があるのにきずき、咄嗟にまだ焼けていないテントの裏に隠れた。 「リオウ……ここから離れよう……」 ジョウイは小声で囁く。 隣にいたリオウは頷き。 足を忍ばせ駐屯地を走り抜けようとした。 「おいラウド。 生き残りがいるみたいだぞ」 気づかれた。 なりふり構わず走り出す。 足音など気にしていられない。 「そのようで……」 ラウドの笑うような声が聞こえた。 西に向かって逃げた。 西は行ったことがない。 一本道で遮るものはなく、わきからは川のせせらぎが聞こえてくる。 「ハァ……ハァ……ジ、ジョウイ!!」 ジョウイに呼び掛ける。 前方に広がる光景が月明かりでかすかだが見えたからだ。 「行き止まりだ!!」 二人とも走るのをやめる。 「どうしよう……」 目の前は切り立った崖だ。 ジョウイはそこを上ろうとして諦めた。 横には遥か下に川がある。 逃げ延びるには、川に飛び込むしか……。 リオウは考えていた。 しかし、危険過ぎる。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加