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火の手は、消していた。
少年兵は、森に潜んでいる都市同盟の兵装をした兵士に襲われているはずだ。
都市同盟が協定を破り、少年兵を虐殺した。
そのシナリオが自分にとって、必要だった。
出世のためだ悪く思うな。
心の中で、ラウドは呟いた。
「これで、国がまた戦に向きはじめる。
親父が余計なことをしなければ、こんな事をしなくても良かったものを……」
ラウドの隣で、不気味な笑みをたたえたルカが言った。
ルカ・ブライト。
ハイランド皇国の皇子。
狂皇子とも呼ばれていて、その残虐性をかくそうともしていない。
「皇子、これで私は出世できるんで……?」
そうラウドが言いかけた瞬間、首元に剣先が触れていた。
ルカが剣を抜いた。
その事を確認したと同時に恐怖が襲い動けなくなった。
「あぁ、一軍を率いらせてやる、お前の実力では荷が重い程だ。
せいぜい、手持ち無沙汰にならぬようにな。
それと、皇子と呼ぶのを止めろ。
今度そう呼んだら、お前の首を胴から切り離してやる」
「は、はい」
震えた声で答えていた。
まだ体が硬直している。
皇子は、いやルカ・ブライトは魔物だ。
この魔物の近くにいれば、よい餌が食える。
ラウドはそう恐怖しながら思っていた。
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二人の会話でだいたいの話は読めた。
自分達は、隊長に裏切られたのだ。
駐屯地まで戻ってきたリオウ達は、人影があるのにきずき、咄嗟にまだ焼けていないテントの裏に隠れた。
「リオウ……ここから離れよう……」
ジョウイは小声で囁く。
隣にいたリオウは頷き。
足を忍ばせ駐屯地を走り抜けようとした。
「おいラウド。
生き残りがいるみたいだぞ」
気づかれた。
なりふり構わず走り出す。
足音など気にしていられない。
「そのようで……」
ラウドの笑うような声が聞こえた。
西に向かって逃げた。
西は行ったことがない。
一本道で遮るものはなく、わきからは川のせせらぎが聞こえてくる。
「ハァ……ハァ……ジ、ジョウイ!!」
ジョウイに呼び掛ける。
前方に広がる光景が月明かりでかすかだが見えたからだ。
「行き止まりだ!!」
二人とも走るのをやめる。
「どうしよう……」
目の前は切り立った崖だ。
ジョウイはそこを上ろうとして諦めた。
横には遥か下に川がある。
逃げ延びるには、川に飛び込むしか……。
リオウは考えていた。
しかし、危険過ぎる。
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