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「リオウ、今のうちにっ!」
ジョウイが、崖から飛び降りようと、目で言っていた。
「うん……」
もう覚悟はできた。
うなずくとジョウイは腰に入れていたナイフで、岩に傷を二つ入れた。
「リオウ。
もし、僕らが生き延びて……でも、離ればなれになってしまったら……その時は、ここで落ち合おう事にしよう」
首を縦に振り、ジョウイと並んで崖の淵に立つ。
「行こう」
リオウは言った。
ジョウイはうなずき、同時に身をなげだす。
真っ暗な空。
星は見えず、月だけが煌々と輝いている。
遠くで滝の音が聞こえる。
ジョウイと遊んだ日々が、ナナミと暮らした日常が、今鮮明に蘇ってくる。
まだ僕は生きたい。
リオウはそう思った。
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