31人が本棚に入れています
本棚に追加
拾い物をした。
そうビクトールから伝令が来た。
来てくれと言っているのだろう。
フリックは騎馬の調練中だった。
ビクトールは歩兵の調練をしていたはずだ。
「小休止」
部下に告げ、馬から降りる。
馬の手入れをして秣(まぐさ)をはませる。
部下もそうしているはずだ。
兵糧もとる事を許していた。
太陽も中天に上り、昼時だ。
馬の手入れを終えた者から、兵糧が配られる。
フリックも、手入れを終えて一口兵糧を口の中に入れ、従者に少し出ることを告た。
従者が馬を引いてきて、フリックはその馬に乗った。
さっきまで乗っていた馬とは違う。
並足で走り始めた。
荒涼とした原野を進む。
伝令の話では、ビクトールは川のほとりにいるとの事だった。
「あいつの拾い物か……。
面倒な物でなければ良いのだが……」
そう小声で呟くとフリックはため息を一つついた。
*******************
川べりで休憩中だった。
部下が上流から人が、流れてきたと報告が入って見に行った。
上流と言うとトトの村あたりから流れてきたのか。
ビクトールは思った。
部下のところに行くと、少年が引き上げられているところだった。
部下が応急処置をしている。
フリックには報告を受けた時点で伝令をとばした。
どうやら、目を覚ましたようだ。
「おい、気分はどうだ?」
声をかけてみる。
「名前わかるか?」
聞いても少年は、ポカーンと自分を見つめている。
*************
目の前に熊がいた。
しかも、人間の言葉を話している。
わけがわからない。
ジョウイ……。
助けて…………。
「おいおい、あまり怖がらせるなよビクトール」
熊の後ろの方から声が聞こえる。
聞こえた方に目をむけると、人が笑いながら立っていた。
「助かった……」
リオウは吐き出すように、言った。
この人は僕を助けに来てくれたのだろう。
「フリックか」
後ろを振り向いた熊は、その人の名前を呼んだらしい。
「えっ?これ熊じゃないの?」
周りにいた人達はそれを聞いて笑い声を上げた。
その笑いが一段落したところで、どうして川から流れてきたのか聞かれた。
「それは、都市同盟が奇襲を……」
「奇襲?どういう事だ?」
フリックが言う。
「まぁミューズ市に使者でもたてて聞いてみるさ、それより……」
まだすべてを話していないのに、二人は自分をおいて話しを進めてしまい、襲われたのは偽装したハイランド軍だと言うことをいいそびれた。
最初のコメントを投稿しよう!