第三章「都市同盟の日々」

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拾い物をした。 そうビクトールから伝令が来た。 来てくれと言っているのだろう。 フリックは騎馬の調練中だった。 ビクトールは歩兵の調練をしていたはずだ。 「小休止」 部下に告げ、馬から降りる。 馬の手入れをして秣(まぐさ)をはませる。 部下もそうしているはずだ。 兵糧もとる事を許していた。 太陽も中天に上り、昼時だ。 馬の手入れを終えた者から、兵糧が配られる。 フリックも、手入れを終えて一口兵糧を口の中に入れ、従者に少し出ることを告た。 従者が馬を引いてきて、フリックはその馬に乗った。 さっきまで乗っていた馬とは違う。 並足で走り始めた。 荒涼とした原野を進む。 伝令の話では、ビクトールは川のほとりにいるとの事だった。 「あいつの拾い物か……。 面倒な物でなければ良いのだが……」 そう小声で呟くとフリックはため息を一つついた。 ******************* 川べりで休憩中だった。 部下が上流から人が、流れてきたと報告が入って見に行った。 上流と言うとトトの村あたりから流れてきたのか。 ビクトールは思った。 部下のところに行くと、少年が引き上げられているところだった。 部下が応急処置をしている。 フリックには報告を受けた時点で伝令をとばした。 どうやら、目を覚ましたようだ。 「おい、気分はどうだ?」 声をかけてみる。 「名前わかるか?」 聞いても少年は、ポカーンと自分を見つめている。 ************* 目の前に熊がいた。 しかも、人間の言葉を話している。 わけがわからない。 ジョウイ……。 助けて…………。 「おいおい、あまり怖がらせるなよビクトール」 熊の後ろの方から声が聞こえる。 聞こえた方に目をむけると、人が笑いながら立っていた。 「助かった……」 リオウは吐き出すように、言った。 この人は僕を助けに来てくれたのだろう。 「フリックか」 後ろを振り向いた熊は、その人の名前を呼んだらしい。 「えっ?これ熊じゃないの?」 周りにいた人達はそれを聞いて笑い声を上げた。 その笑いが一段落したところで、どうして川から流れてきたのか聞かれた。 「それは、都市同盟が奇襲を……」 「奇襲?どういう事だ?」 フリックが言う。 「まぁミューズ市に使者でもたてて聞いてみるさ、それより……」 まだすべてを話していないのに、二人は自分をおいて話しを進めてしまい、襲われたのは偽装したハイランド軍だと言うことをいいそびれた。
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