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「いいように解釈しないでくれよ!あ、そういえば、今日は来るの遅いじゃないか。いつも30分前には来てるだろ」
彼をちらりと見ると、その肩からは鞄がぶら下がっており、今から講義室に行くように思える。
これから始まる講義は人気が高く、彼も受講していたはずだ。
それに講義がなければこんな朝早くから大学には来ないだろう。
「それが今日はあの人いないのに、目覚まし鳴らなくてさ。それでばたばたしてる間にこんな時間になったんだよ」
「あの人って君の里親かい?」
「うん」
そう、彼――イヴァン・ブラギンスキは児童養護施設出身なのだ。
彼は小学校に上がって間もなく引き取られ、今は里親の元で暮らしている。
何の因果かその里親は近所に住んでおり、幼稚園、小学校、中学校、高校と地元に通っているのだ。
そんな彼と俺は所謂腐れ縁というやつで幼稚園からずっと同じクラスだったりする。
まさか大学まで一緒になるとは思わなかったけど。
「あ、そろそろチャイムなるんじゃない?」
ふと過去を思い出していたが、その思考はイヴァンの言葉によって停止させられてしまった。
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