1.出会い

9/21
前へ
/24ページ
次へ
ーーーーーーー 「って…何でいるんだい?」 今日一日の講義を終えて帰宅すると、朝会話をしていた天使がテーブルの上ですぴすぴと寝息を立てていた。 幻覚だと思いたいが、まだ見えるということは幻覚じゃないのかもしれない。 「ていうか、布までかけてるし」 肩にかけている鞄をその辺に置いて近寄ると、彼がかけている布の色がはっきりと見えた。 淡い青と緑が綺麗にグラデーションされていて、彼によく似合う。 見覚えがないということは彼が自分で出したものなのだろう。 そんなことを思いながら、幼子が持っているはんかちほどのそれを摘まむと 「アル」 「え?」 身動ぎ、ふわりと微笑んだ。 しかも、朝には感じられなかった朗らかな雰囲気を醸し出しながら、俺の名前を呟いている。 彼に名前を教えていないことを反芻するが、確かに彼の口からは俺の名前が聞こえた。 と、いうことは俺じゃない『誰か』の名前を呼んでいる……?
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加