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「って…何でいるんだい?」
今日一日の講義を終えて帰宅すると、朝会話をしていた天使がテーブルの上ですぴすぴと寝息を立てていた。
幻覚だと思いたいが、まだ見えるということは幻覚じゃないのかもしれない。
「ていうか、布までかけてるし」
肩にかけている鞄をその辺に置いて近寄ると、彼がかけている布の色がはっきりと見えた。
淡い青と緑が綺麗にグラデーションされていて、彼によく似合う。
見覚えがないということは彼が自分で出したものなのだろう。
そんなことを思いながら、幼子が持っているはんかちほどのそれを摘まむと
「アル」
「え?」
身動ぎ、ふわりと微笑んだ。
しかも、朝には感じられなかった朗らかな雰囲気を醸し出しながら、俺の名前を呟いている。
彼に名前を教えていないことを反芻するが、確かに彼の口からは俺の名前が聞こえた。
と、いうことは俺じゃない『誰か』の名前を呼んでいる……?
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