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「っ、ああもうさっさと起きるんだぞ!」
何故か気に入らず、布を勢いよく剥ぎ取ると彼はふるりと体を振るわせ、瞼を徐に動かした。
朝は気にならなかったが、微かに開かれた瞼の下から綺麗な緑色が覗いている。
消え入りそうに淡いのに、森のように深いその瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
そんなことを思っていたら、当の本人は状況を把握出来ないのか、ふよふよと視線をさ迷わせていた。
布がなくて心細いのかなと思い、先程剥ぎ取ったものをかけると満足そうに微笑み、また目を瞑ってしまった。
「寝た、のかい?」
頬をつついても起きる気配はなく、ふにゃふにゃと幸せそうに笑いながら、寝息を立てている。
『アル』って奴の夢でもみてるのかな?
「……って、何なんだよ!」
何故か胸の辺りがもやもやする。
脳内をフル回転させて、気持ちが晴れない理由を考えてみたけど全然分からない。
「あーお腹空いたんだぞ」
いくら考えても理由が分からないため、とりあえず夕飯を食べようと少々埃の被っているエプロンを引っ張り出した。
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