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「ん…」
「あ、やっと起きたんだね」
夕飯を作っている間に睡眠が足りたらしく、彼はむくりと起き上がり、キョロキョロと周りを見渡し始めた。
暫くすると状況を理解したらしく、彼は虚ろな表情から一変して蒼白になった。
部屋で何かやらかしたのかと内心焦ったが彼は俺の心配とは他所に、わりぃ今出ていく、と飛び立とうとしていた。
「ちょっ、待ってくれよ!」
彼の去ろうとする姿を見たら、きゅうと胸が締め付けられるのを感じた。
何でこんなに苦しいんだろう。
そんな焦りを含んだ声は彼に届いたらしく、一瞬動きを止めたが静止するには至らなかった。
故に彼を止めようと体を動かしたが、今しがた夕飯を作っていた為、調理器具にぶつかってしまった。
でも、今はそんなことどうでもいい。彼を引き留めることが先決だ。
その気持ちが届いたのか、彼は俺が落とした調理器具の音に再度動きを止めた。
その隙に歩みを速め彼を捕えると、何すんだ、ばかぁ!と手の中で暴れだした。
「ねぇ君、用があるんじゃないの?」
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