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誰もが幸せを願っている
誰もが明日の幸福を祈っている
辛い現実から目をそらすように…
つまらない日常から逃げるように…
だから、誰もが眠るとき、素敵な夢をみることを願う
そう…誰もが……
太陽は西空に姿を隠そうとし、蒸し暑さだけを地面に残す。滑稽なほど代わり映えのない日常。大半の人々には。
裏路地では、聞くに耐えない音が響いていた。獣が獲物にむしゃぶりついているような音。
彼の前には一人の男性が横たわっている。あわれなその男性の頭部は、もう姿形を残していない。彼はポケットから一枚のカードを取り出し、死体のそばに置いた。
《JOKER》
死体の傍らで、道化は不気味に笑っていた。
直樹は部屋であくびをした。夏休み最後の日、というのは学生だったら憂鬱になるのは当然だ。明日は日常に変化が訪れる。が、それは決して幸せな変化じゃない。少なくとも直樹には…
宿題はまだ残っている。しかし、全部が全部明日提出というわけではないのだ。だから、彼にはそんなに焦りはなかった。
ただ、面倒なのは変わらない。宿題というのは、いつの時代もそういうものなのだから。
辺りはすっかり暗くなっていた。彼は部屋を出た。そろそろ夕食の時間だろう。
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