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-夏休み明け初日-
残暑の中、学生たちが登校していく。教室にちらほら生徒が現れてきた。直樹もドアを開けて入った。
「ナオキ、おはよ~!」
クラスメートの利根井が言った。
「オッ!トネ、早ェ~じゃん。どんな風の吹き回しだよ」
「い~じゃん、い~じゃん。たまにはこういうこともあるって」
直樹は席に着くと、持っていたショルダーバッグを床におろした。
「ナオキ、知ってる?」
利根井が声をかけた。
(何をだよ…)
直樹は声には出さず、別の言葉を発した。
「知らねェ~」
「へェ~、知らないんだ~……」
(だから、何のことだよ……。それを先に言え!)
「ウチに、転入生が来るんだって」
「ふゥ~ん」
直樹は冷めた反応をした。
「何、その反応…?なんか冷めてね?」
「新学期は、別に珍しくないだろ?」
「…」
「何?俺に、『うわっ!マジで!?』とか言ってほしかったの?」
「いや…別にそうじゃないけど…」
「ならいいじゃん。傷ついたわけじゃないんだろ?」
「あっ…傷ついたかも…」
「ウソつけっ」
「言ってみただけだよ」
利根井はそう言うと、直樹の隣の福永の席に座った。
「でさ、転入生って男?女?」
「さぁ~…」
「使えねェな~…」
直樹はわざとおおげさにため息をついた。
「使えねェ、とか言うなよな」
「傷ついた?」
「うん…」
「そう言いながら笑ってるし」
直樹がそう言ったとき、福永が入ってきた。
「トネ、どけ」
「はいはい」
利根井が席を立つと、福永が直樹の隣に座った。
「ナオキ、まだ髪染めてんの?」
「何、それ?お前の朝のあいさつ?」
「違いますけど」
「いちいちさ、そういうの指摘すんなよ」
「まだ髪染めてんだなぁ、って思っただけ」
「悪い?」
「全っ然!」
福永はそう言うと、ポケットからハンカチを出して、額を拭いた。
チャイムが鳴る。
眼鏡の先生と、無表情の男子が入ってきた。生徒たちがあわてて席に着く。
(多分…、こいつはモテるな…)
直樹は転入生を見て、そう思った。
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