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入ってきた転入生は、檀上で会釈した。
「今日から、本校に転入してきた、依川仁(よりかわじん)だ。依川、あいさつしろ」
担任の高橋先生に促され、依川は話し出した。
「今日からお世話になります、依川です。よろしくお願いします」
依川は口早に言った。
「依川くんって、髪色が金色っぽいよね。湯崎(直樹の苗字)と同じで不良なのかな?」
直樹の後ろの女子がひそひそ声で話していた。直樹は振り返って、女子たちをにらみつけた。
「ま、でも、人としての質が違うわね」
直樹を見て、女子たちが言った。
(黙れ、ブス!誰もテメェらの評価なんか知りたくねェよ…!!)
直樹と福永は、同時に思った。
依川は、自分の髪色のことが疑問に思われていることに気付いた。
「僕、クォーターなんです。祖父がイギリス人なんで……」
依川が言った。
「やっぱり、品格が違うと思った」
すかさず、さっきの女子たちがつぶやいた。
「テメェらも、品格ねェな~」
直樹は振り返って言った。
「アンタには言われたくないね」
「ホラッ。口調が下品だねェ~。そんなんじゃ、転入生くんの第一印象が落ちちゃうよ~」
直樹はニヤついた。
「…」
隣の福永も笑みを浮かべている。
「じゃ、依川、一番後ろの空いてる席に座りなさい」
高橋先生が言った。
依川はそれに従った。
依川が席に着いたのを確認すると、高橋先生は続けた。
「じゃ、一時間目は、始業式だから、廊下に並べ」
それだけ言うと、高橋先生は眼鏡をクイッと上げて、ドアを開けた。
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