13人が本棚に入れています
本棚に追加
そして次の日、空ちゃんは晴れて退院した。
看護婦さんから花束やら何やらをもらって、まだ入院している子たちと別れを惜しんだ後、ボスの車に乗った。
「今からどこに行くの?」
「これから空ちゃんが住むところに行くんだ、きっと気に入るぞ~」
「ボクが、住む……ところ」
複雑な状況だよな……空ちゃんはもう、かつて住んでいた場所が帰る場所では無いと思っているが、両親が自殺していることは知らない。
まぁ……知らないのはオレのせいだが。
空ちゃんはそれ以降は窓の外を眺めたまま、黙ってしまった。
やはり、両親のことが気になるのだろうか? 何故誰も両親のことについて触れないのか、もしかしたらもう気付いてるのかもしれないが……
一時間ほど車を走らせて目的地に着いた。
車から降りるとそこには緑に囲まれた、プールやらテラスやら……セレブと一目でわかる屋敷が見える。
「あらあら、お待ちしておりましたよ」
この人が、防衛隊に無くてはならない人、カエデさんだ。
カエデさんはある大富豪の娘さんで、子供の頃に誘拐されたことがあるらしい。保護されて犯人も捕まったがその時に負った心の傷がカエデさんをこうさせたのだろう。
「あなたが空ちゃんね? 大変な目に遭ったのね、でももう大丈夫。もう二度と、私がそんな目には遭わせないから」
「あ、え? これからボクは……ここで暮らすんですか?」
やっぱり、戸惑いは隠せないみたいだ。退院してすぐ全く違う、知らない場所で暮らすんだからな。
「大丈夫、カエデさんも凄く優しい人だし、空ちゃんよりも前に来た女の子も何人か住んでるんだ。きっと仲良くできるよ」
と安心させたい一心で声をかける、まぁすぐに受け入れろと言っても無理な話だな。
最初のコメントを投稿しよう!