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「アンジェちゃん、あの若もんとは仲が良いのかい?」
頬骨の出っ張りをピンク色に染めたご老人がニコニコと聞いてくる。知りたがりと言うより聞きたがりの年寄り性だ。
「仲は良くないわよ、ちょっと前に大きな借りが出来ちゃって」
「女の子なのに借りなんて言うもんじゃないよ」
「えぇ、彼にも言われたわ。でもそれは私のプライドが許さないの、借りた物はきっちり返さなきゃ」
「商売繁盛の秘訣かね」
「一種の、かしら?」
サービスにご老人へワインを一杯、祖父母の居ないアンジェにとってはこの一時が何よりも大切だった。
しばらくしてから先ほどの黒くずぶ濡れの服を脱ぎ、アンジェの父が昔使っていたワイシャツを着てやって来た常連さん。手にはモップがある。
「似合ってるわよ、モップが」
「嫌味だな・・・」
「じゃぁお掃除よろしく」
「はいはい」
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