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夕日に照らされる街角、対となるように影のある路地。二つの狭間である曲がり角に立つ一人男、小さなレンズの丸い黒眼鏡を掛けて秋風と共にタバコの煙を遊ばせている。着ている服もピアスも眼鏡も黒に統一、唯一違うのは赤毛混じりで長めの茶髪。後ろ髪は緩い一つ縛りで纏めてある、だが少々雑。スラリと高い身長にはまぁ似合う服装と髪型だと思われる。
しばらくしてタバコの火元から立ち上る副流煙のカーテンが揺れ、同時にあるもう一人の男性の姿を見せる。急いで自分で作り出している煙を退けながらその男の目の前に壁となって待ち伏せた、黒眼鏡の奥からニッとした笑ってみせるが眼鏡のせいで口元ぐらいしか正確には見えない。
「よっ」
「・・・」
「おい、返事しろよ」
「必要が無い」
「おいおい、こっちは必死の思いでお前を見つけ出したんだぞ?少しは話を聞いて・・・、って、言ってるそばからお前は!」
タバコを指に挟んだ状態で文句を垂れる眼鏡の男、しかし完全無視を決め込んだ者には全く意味を成さないようだ。ズンズンと夕日に照らされる商店街へと向かう男を追う眼鏡の男、しかし人が邪魔でなかなか近寄れない。
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