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仕事帰りの車が渋滞を作る頃。または夜勤の労働者が出勤する頃。
道路は石でウロコの模様を表したようなデザインで、街灯はランタンを模して吊り下げると言った形だ。しかしその街灯もちらほらとしか無く、角は真っ暗で怪しい人が居ても不自然ではない。各家庭もそろそろ夕食を終えた頃で静かである。
薄汚れたような黄色い光が照らす下を誰かが通り過ぎた。そしてすぐに影は角へと消えてしまった・・・、と言いたい所だが、ちょっと待ってほしい。
普通はそこで闇に消えるのがお決まりだが、それでは先に進まないし、事実とは違う。角を曲がった先には街灯より明るい光が道を照らしていた為に、影は濃くなるだけであった。
この時間に女性はそう居ないし、骨格を見た感じでも、照らされた影は男性だろう。
明日くる低気圧のせいで今夜は冬並に冷え込み、息が口先でほんの一瞬だけ白くなった。そしてその白い吐息が見えた理由は目の前にある光、古びれた家の電灯。今はホテルであり、ある仕事の本社でもある。
影、男性。彼の呼び名は“一応”、ヴィオレ。ついでに言えば“一応”、探偵。
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