変人の巣窟

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雑賀はいつも高スペックすぎてわたしとは釣り合わない、彼とわたしは別次元に居る。畦道をランボルギーニが爆走するがごとき違和感をいつも感ずるのだ。 彼はお金持ちだし、神に慈しまれたかのような美しき顔の持ち主だし、それに性格だって金持ちを鼻にかけるような気取ったもんじゃなくて、むしろ優しいし気さくだし。その上成績優秀、スポーツ万能とくれば一体お前にはなにが欠けているんだと尋ねたくなるほどの超人である。まるで昔夢で見た白馬に乗った王子様のような完全なる高スペック。こんなやつに釣り合うおなごなどこんな田舎の高校にはいやしない。むしろ彼が居ること自体が奇跡に近いのだ。 つまり彼は王子様のような風貌で学校指定の学ランをまるで「パリで流行っているスタイル」のように着こなしちゃう化け物のような男である。 それにくらべてわたしはどうだ、田舎の田舎っぺである。学校指定のセーラー服をきっちり着ちゃうような真面目な女の子である(自分で言うと信憑性が薄れるが)。 演劇部に所属しているせいか、校内での知名度は(彼ほどではないが)高いものの、いつも頂くのはわけのわからん役ばかり。 この前は「ゴスロリ星から来たゴス・ロリ子ちゃん」役。この役の衣装を得るためにわざわざ原宿まで出てゴシックロリータのお洋服をなけなしの金で買っちまったのであった、部費は出なかった(ゴスロリ服は高いんだな)。 その前なんか「ウルトラセブソ」とかいう明らかそれ円谷プロから怒られちゃうよ!みたいな演劇で「ヌンアさん」役をやらされた。要するにアンヌさんが逆立ちしたような役、円谷プロさんごめんなさいな内容。 ともかく演劇部には変な奴が集っているのである。そんな変な奴がひしめく中で生きているわたしはきっと雑賀のような貴族階級のかほりをぷんぷんと匂わせる男には釣り合わない変人のなかの一人なのだと思っていた。 ほんの数分前までは。
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