変人の巣窟

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あすちゃんの脳は腐っているのではないか、友人にそんな失礼な疑問を持ちつつ、わたしはあることを思い出していた。 それはついこの前のこと。部長に歩き方をご教授して頂いたことがあった。 どうやらわたしより部長のほうが身のこなしが女性らしいとのことである。しかしわたしは女の子だ、部長のほうが女らしいなんて悔しいと思う気持ちだって少しくらいはあった。そこで部長に歩き方を教わっていたのだ。 そのとき部長のポケットから何かがぽろりと落ちたのである。 部長が落としたのはカードバインダー。中身を拝見すると沢山の美少年系男性アイドルのラミネートカードや写真が眩しいくらいの白い歯を見せて笑っていた。 「ぶ……部長落とし物です」 「あら!ありがとう……ところであんた、中身見た?」 「いえ見てません」 「本当に見てないんだな?」 「部長、男に戻ってます」 「あらやだ」 そう言って部長は美少年だらけのカードバインダーを受け取り、ポケットの中に入れた。 あの時の男性アイドルの笑顔が、雑賀の微笑む表情とわたしの脳内で重なった。こ……これはまずい。あすちゃんの言うこともあながち間違ってはいないのであった。 「あ、あすちゃん、止めよう、雑賀の入部」 「えー、わたし結構見てみたいんだけどそういうの」 「あすちゃんは一体どういうのが見たいんだよ!!」 やはりあすちゃんの脳は腐っているらしい。好奇心に定評のある雨竜明日香、通称あすちゃん、演劇部二年である。今日は長い髪をツインテールにしており、解けば床に付きそうな長さらしい。 わたしは呆れて部室内を見渡した。依然としてどこか遠いところを見ている杉山……オンドゥル先輩、南雲くんと雑賀はテトリスの対戦を始めたらしい、上条くんは相当南雲くんのパンチが効いたのか起き上がる感じがしない、し、死んでないよな。
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