外道魔法使い

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外道魔法使い

「キャーー!!」 若い女の人だった、素朴な出立ちで傍目からも逃げ遅れた村人だと言う事は知れた。 彼女は泣いていた、円らな瞳に涙を沢山ためながら、その瞳は赤く充血していた。 体は小刻みに震えていた、恐怖による蝕みだろう。それもそのはずだった、彼女の前には一匹の魔物がいた。 ゛オーク゛と呼ばれる、豚と人間を交ぜた存在、知性に乏しく、日々食欲と性欲に塗れた醜い存在だ。 上半身は裸、体はブヨブヨと脂肪の塊と化していた、歩く度にその脂肪が揺れ動く。オークの外見は醜悪だ、一般人はその姿を正面に見ただけで腰を抜かしてしまう程だ。 ゛オーク゛は決して人間じゃない、ただの醜い豚と等しい。 彼女は一層泣き声を強めた、この先の展開を想像したのか。その顔は絶望の色に染まっていた。 全くだ、世も末と言う奴だよ。僕は嘆息を吐いた、何でこんな活気のある村に゛オーク゛が紛れ込む。近隣ギルドは一体全体何やってる。 僕がたまたま任務帰り立ち寄ったからいいものを、もし僕がこの場に居合わせていなければ、この女性の一生が狂っていただろう。 国の杜撰な防衛システムに僕は再び嘆息を吐いた、全く世の中には安全はないな。だからこそ僕がこの国のトップに立たなくてはイケないのだ。 「グヘへへ、若い女は久し振りだぜぇ!」 ゛オーク゛の下品な笑い声が耳に届いた、そろそろ彼女の精神的な事を考慮しなければな。 僕は右手に握る魔剣の柄を強く握り締めた、物陰から体と飛び出させ彼女と゛オーク゛の間に飛び込んだ。
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