Chapter.1【二つの出逢い】

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「私はアイル、使い魔です」 その言葉を理解するのに、祐介は十数秒を要した。 正確には、理解しようとした時間だ。 結局祐介には理解できず、考えるのを諦めた。 「……じゃ、俺は行くわ」 「ええっ! ガン無視ですか!?」 アイルと名乗った女の子は酷く傷付いたらしく、引き返す祐介を半泣き状態で止める。 「行かないで下さいっ! あなたは私の……希望なんです!」 「……意味分かんないから」 何だこいつは。 人として感性がずれているのはもちろん、見た目からして人である確信すら持てない。 怪しいなんてものじゃない。 「出会って三分の幽霊にプロポーズされちまったか、今日は厄日だな」 「あああ、行かないで! 引かないで!」 さらりと受け流して逃げようとする祐介の腰に、後ろからしがみつくアイル。 気味が悪い。 「やめろ鬱陶しい。幽霊にまとわりつかれるなんて、縁起でもない」 「うう……私は幽霊じゃありません。使い魔です」 しがみつくのをやめたアイルは、祐介の服の裾を申し訳程度につまんで進行を妨げていた。 「……お人好しなのかな、俺」 何だか自分が悪いことをしている気がしてきたので、渋々祐介は彼女の話を聞くことにした。 「あっ! 振り向いてくれた! わーい!」 「喧しい、その感嘆符だらけのしゃべり方をやめろ」 何が『わーい』だ、まったく。 「うっ……すみません」 両手を上げて万歳をしていたアイルは、一気にテンションを落としてしまった。 今さらだが、喜怒哀楽の激しすぎる女の子だ。 「それで、えっと……」 「まあ待て。トイレで話をすんのも何だし、場所を変えようぜ」 「は、はい、分かりました」 と言ってから、アイルはようやくここが何処だか把握したらしい。 「え、え? ここって……」 「男子トイレだが」 祐介の発言で、アイルは顔を真っ赤に染めた。
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