Chapter.1【二つの出逢い】

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既に授業は始まっていたので、祐介は身を屈めて忍び足で廊下を通り過ぎた。 アイルは、呑気に鼻歌を歌いながら、ふわふわとついてきている。 どうやら、他の人にはアイルが見えないようだ。 一体これはどういうことなのか気になったが、廊下で話し込むわけにもいかない。 屋上へ繋がっている階段を目指して、祐介は歩くスピードを上げた。 数分後。 「ああ、久々の日光です!」 屋上へ着くと、アイルは気持ち良さそうに体を伸ばした。 触角のような前髪も、右へ左へ小さく動いている。 「さて、それじゃあ話してもらおうか」 設置されたベンチに腰掛けながら、祐介は早速切り出した。 「はい。……うーん、どこから説明すればいいのやら」 「とりあえず、何でお前が透明なのかについて教えてくれ」 優柔不断なアイルを、祐介が誘導する。 「はい。えっとですね、私は使い魔なんです」 さっきも聞いたことだ。 「使い魔というのは……主に絶対服従の契約を結んだ魔物のことです。魔物以外にも、精霊や動物などに契約させる場合もあります」 いきなり凄まじい内容だ。 こんな能天気な女の子が、実は魔物でしたと言うのだから驚きである。 祐介の中では、それくらいいいかげんな感覚で話を聞いていた。 「主のことを一般的に“マスター”と呼びます。絶対服従と言うからには、マスターの命令には逆らえません。もし逆らうと、三日以内に消滅してしまうんです」 要するに、マスターに心酔してるマゾか。 鼻をほじりながら、祐介はあくびをした。 「えっと……ここまでは理解できてますか?」 「ああ、バッチリだ」 祐介は、アイルに向かって言い放った。 「お前はマゾなモンスターで、男子トイレで泣きながらご主人様を探している変態だ」 「えええええーッ!?」 酷くショックを受けたらしい。 アイルは涙目で祐介に詰め寄る。 「どう考えたらそんな結論に至るんですか! 頭大丈夫ですかァ!?」 ちょっと表現を工夫しすぎたかもしれないが、よりによってアイルに頭の中味を疑われるのは少し腹立たしい。 「あのな、俺は真面目に質問したんだ。お伽噺を聞きたいわけじゃない。そっちも真面目に話してくれないか」 「それはこっちの台詞ですよ。私は真面目に話してます」
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