Chapter.1【二つの出逢い】

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「既存の精霊や動物と契約をするのが普通なんですが、私の場合は少し特殊で。マスターが魔力を凝縮させて、一から私を作り上げたんです」 今度はもっとすごい話だ。 それが事実ならば、マスターとやらは自分一人で新たな命を生み出したことになる。 にわかに信じがたいが、アイルの目は真実だと訴えていた。 「使い魔として生まれた私は、その場で契約を結ぶことになりました。産みの親ですから、私は何も疑わずに契約したんです」 生まれて初めて見た者に懐く、動物の本能と同じなのだろうか。 祐介は、ぼんやりとそんなことを考えていた。 「ですがその……マスターは荒っぽくて。私を物と同等に扱うんです……召使いじゃなくて、奴隷のように」 アイルが身震いする。 よく見ると、細い脚のところどころにアザがあった。 「あ、別に毎晩エッチなことをされてたわけじゃないですよ? やだなあ私の下半身を見て何を妄想し……ふぎゃっ!?」 全部言い切る前に、祐介はアイルの鼻をつまんだ。 もっとも、伏せたい内容のほとんどは言われてしまったのだが。 「さっさと話せボケナス」 「ううう……」 言ってからちょっと乱暴にしすぎたかと後悔した祐介だが、そこまで傷付いた印象はないのでホッとした。 半泣きではあるのだが。 「と、とにかく。休む暇も与えず激務を押しつけたり、失敗する度に暴力を振るったり……とても怖かったです」 生まれたてで何が何だか分からない中、唯一そこにいた人間を信用しようとするのは自然だろう。 最初に心を許した相手にそんな酷いことをされたのなら、傷も深いはずだ。 「こんなこと絶対にいけないんですけど……3日前に、私はマスターから夜逃げしました」 「で、トイレで泣いていたと」 ようやく話が繋がった。 「はい。先ほど言った通り、マスターの契約を破った使い魔は、3日以内に消滅してしまいます」 「3日前の夜に抜け出したわけだから……今夜でお前は消えるわけか」 それは何とも……穏やかでない話である。 ジョークで済む内容ではない。 人が死ぬのと大差ないことだ。 「そうです、だから貴方は私にとって唯一の“希望”なんです!」 祐介の胸元を力強く掴んで熱弁するアイル。
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