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「待て待て。ようやく胡散臭いお前の話を信じようって気が起きてんのに、また飛躍させるんじゃない」
とりあえず、逃がすまいと必死で掴んでいる両手を離してもらう。
「契約を破ったら消滅しますが、例外があります」
「それは?」
ひょっとしたらと、祐介は自分にも勘付くところがあった。
正直、あまり喜べる予想ではない。
「別の対象と契約を結んだ場合、その場で主従関係が成立します。前のマスターとの関係が自動的に切れたことになり、契約した相手が新たなマスターとなるんです」
「それは何とも……尻軽な契約システムだな」
それが本当なら、取っ換えひっかえで契約を繰り返せることになる。
マスターはたまったものじゃないだろう。
「いえ、契約には常に双方の同意が必要なんです。無理やりなんてできません。だからこそ、お互いを信頼しあった関係でないと契約は結びません。使い魔が頻繁にマスター替えをする構図を思い浮かべたかもしれませんが、そんな浮気者の使い魔と、マスターも契約したがりませんから」
「なるほど、ね」
アイルの場合、産みの親を信頼したのに裏切られたということなのだろう。
確かに契約は慎重にすべきだろうが、彼女の様に騙された使い魔の立場も考慮したシステムらしい。
「ここまで言われたのなら、もう分かるでしょう」
一呼吸おいてから、アイルは思い切ったように言った。
「私と、契約して下さい」
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