Chapter.1【二つの出逢い】

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「ついて来るな!」 一度だけ、大声でそう言った。 そして、それ以降は走ることで彼女を拒否した。 階段を駆け下り、教師に見つかることなど気にも止めずに廊下を疾走する。 下駄箱で急いで靴を取る。 踵で強く踏みつけて靴を履いた。 上履きを乱雑に押しこみ、「引」と書いてある昇降口のドアを無理やり押して外へ出る。 校門を乗り越え、逃げるように学校を走り去る。 信号も無視し、決して後ろを振り返らずに。 古びたアパートの階段を駆け上がり、「上之宮」と書かれたドアを乱雑に開ける。 鍵はかかっていない。 急いで玄関へ逃げ込むと、祐介は滅多にかけない鍵を強くかけた。 逃げ切った。 祐介は、安堵のため息をもらし、玄関のドアに寄りかかった。 追いかけてきたにせよ、あそこまで露骨に拒否されればきっと諦めてくれるだろう。 呼吸が落ち着いてから、祐介は靴を脱いだ。 高校生ながら、アパートで独り暮らしをしている祐介。 それにはちょっとした事情があるのだが、それはまた追々綴ることにする。 「そういや、スクールバッグを置いてきちまったな」 ふと、祐介はつぶやいた。 別に、中に大したものが入っているわけでもないのだが。 財布は常に尻ポケットに入れるし、生徒証なんて学割以外用のない代物だ。 「やれやれ、だ」 数日間干していない布団に倒れ込み、祐介はまたため息をついた。 後味が悪い。 俺に見捨てられた彼女は、この後一体どうするのだろうか。 泣こうが喚こうが、誰かと契約を結ばない限り、今夜を過ぎれば彼女は消える。 きっと今頃、強力な魔力を持つ俺を失ったことを惜しいと思いつつ、新たな命綱を求めて必死に声をかけているのだろう。 結局、浮気者じゃないか。 なにが「契約には互いの信頼関係が必要」だよ。 契約さえできれば誰でもいいくせに。 忘れよう。 気分が悪い。 こういう時には、寝てしまうのが一番だ。 祐介は目を閉じ、十数分後に眠りについた。 その短い時間の中、アイルが侵入してくる気配は、全く感じなかった。
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