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教室から、オーッと面食らった様な声が響いた。
男女問わず、思わず唸ってしまったのだ。
だが、祐介だけは別段取り乱すこともなく、無関心な顔で外を眺めていた。
「初めまして、上之宮玲菜です」
金髪、いやブロンドと言った方が雰囲気は伝わるだろうか。
不良が染めるようなだらしない金髪ではなく、彼女のそれは上品さを感じさせる、透き通るようなブロンドだった。
服も白いワンピースで(姫野大路学園は私服制だ)、胸元も脚も適度な露出て留めておきながら、彼女の魅力が伝わってくる。
率直に言って、彼女は美しく上品だった。
生徒達の視線を釘付けにするのは、容易いことだった。
「上之宮と書いて、うえのみやと読む」
黒板に彼女の名前を書きながら、三谷が説明した。
「席は、えーっと……」
三谷がどもる。
現在、三谷のクラスの生徒数は、編入生の玲菜を除いて奇数だ。
二人一組で席を寄せあうため、どうしても一人だけ余る。
その生徒の隣へ彼女を誘導するのが、普通だろう。
だが、三谷がどもるのには訳があった。
彼の発言の直後、クラスメート全員が一斉に祐介の方を向く。
そう、祐介は問題児だったため、常に教室の一番端の一人席だったのだ。祐介が三谷を嫌う理由の一つは、これだ。
「あー……彼の隣に。机は、後ろの余っている物を選んで」
「分かりました」
激変した教室の空気も物ともせず、玲菜は祐介の席へ歩き始めた。
祐介も祐介で、主に男子生徒達の様々な感情が入り混じった視線を気にするほど神経質ではない。
悠然と歩み寄る玲菜を、頬杖を付きながらただ見つめていた。
「な、なあ……机運び、手伝おうか?」
一人の男子生徒が、さっそく玲菜にアタックをかけた。
が、
「いいえ大丈夫よ、わざわざありがとう」
上品な笑顔で拒否され、呆気なく玉砕した。
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