Chapter.1【二つの出逢い】

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「よっ、と」 机を運び終えると、玲菜は機敏な動作で席につき、祐介の方を見た。 仕草から察するに、彼女はおしとやかというより、気丈で強かなお嬢様の様だ。 それでありながら上品さも見え隠れする……。 「えっと、貴方は?」 「……祐介だ」 下の名前だけ、ぶっきらぼうに呟いてみせた。 「うーん、いきなり下の名前で呼び合うのは抵抗があるし、苗字を教えてくださらない?」 敢えて避けていたところを容赦なく突かれ、祐介は苦虫を噛み潰した様な表情になった。 「……上之宮」 「え? ごめんなさい、よく聞こえなかったわ」 どうやら嫌味などではなさそうだが、もう一度言わなければいけないと思うと、祐介はますます腹立たしかった。 「上之宮だよ、かみのみや。読み方こそ違えど、お前と全く同じ漢字だ」 祐介の言葉に、上之宮(うえのみや)玲菜は一瞬戸惑った様だが、すぐに余裕のある表情に戻った。 「あら、それは奇遇ね」 「いい迷惑だと思うんなら、そう言って良いんだぜ。俺は遠慮なくそう言わせてもらうからよ」 祐介の露骨な態度に、玲菜は顔をしかめた。 そして気だるそうに頬杖をつく祐介に顔を急接近させ、怒りを露にした表情で、声を圧し殺しながら言った。 「なら、言わせてもらうわ。アンタみたいな不良と瓜二つな苗字なんて、へどが出るわよ」 幸か不幸か、掌を返したような玲菜の態度は、他の生徒には知られていないようだった。 祐介はと言うと、玲菜の豹変にさほど驚いてはいなかった。 どうせキャラ作りだろうと踏んでいたからだ。 祐介が冷めた視線を送ると、玲菜は我に返り、急いで表情を取り繕った。 祐介は興味無さそうに欠伸をすると、毎日恒例の睡眠学習に入ることにした。
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