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「よっ、と」
机を運び終えると、玲菜は機敏な動作で席につき、祐介の方を見た。
仕草から察するに、彼女はおしとやかというより、気丈で強かなお嬢様の様だ。
それでありながら上品さも見え隠れする……。
「えっと、貴方は?」
「……祐介だ」
下の名前だけ、ぶっきらぼうに呟いてみせた。
「うーん、いきなり下の名前で呼び合うのは抵抗があるし、苗字を教えてくださらない?」
敢えて避けていたところを容赦なく突かれ、祐介は苦虫を噛み潰した様な表情になった。
「……上之宮」
「え? ごめんなさい、よく聞こえなかったわ」
どうやら嫌味などではなさそうだが、もう一度言わなければいけないと思うと、祐介はますます腹立たしかった。
「上之宮だよ、かみのみや。読み方こそ違えど、お前と全く同じ漢字だ」
祐介の言葉に、上之宮(うえのみや)玲菜は一瞬戸惑った様だが、すぐに余裕のある表情に戻った。
「あら、それは奇遇ね」
「いい迷惑だと思うんなら、そう言って良いんだぜ。俺は遠慮なくそう言わせてもらうからよ」
祐介の露骨な態度に、玲菜は顔をしかめた。
そして気だるそうに頬杖をつく祐介に顔を急接近させ、怒りを露にした表情で、声を圧し殺しながら言った。
「なら、言わせてもらうわ。アンタみたいな不良と瓜二つな苗字なんて、へどが出るわよ」
幸か不幸か、掌を返したような玲菜の態度は、他の生徒には知られていないようだった。
祐介はと言うと、玲菜の豹変にさほど驚いてはいなかった。
どうせキャラ作りだろうと踏んでいたからだ。
祐介が冷めた視線を送ると、玲菜は我に返り、急いで表情を取り繕った。
祐介は興味無さそうに欠伸をすると、毎日恒例の睡眠学習に入ることにした。
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