Chapter.1【二つの出逢い】

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休み時間。 祐介の予想通り、クラスメートが転入生の席にぞろぞろと群がる。 好奇心旺盛なのは実に結構だが、祐介からしたら安眠妨害以外の何物でもない。 「お父様が中小企業の社長を務めていまして……」 「へえ! じゃあ上之宮さんは社長令嬢か!」 馬鹿馬鹿しい、何が“お父様”だ。 へどが出る。 祐介は頬杖を付き、顔をしかめながら心の中で皮肉る。 玲菜は、男女関係無く、誰とも分け隔てなく話す。 時折見せる上品な笑顔。 髪を整える仕草さえ、育ちの良さを伺わせる。 だが、祐介は知っている。 知り合って数分後に、彼女はあっけなく本性を表した。 クラスで浮いている自分になら、何をしたって大丈夫ってか。 「…………」 隣のクラスからのギャラリーも来る中、祐介は無言で席を立った。 一瞬、わいわいと賑わっている空気にヒビが入ったが、すぐに何でもないかのように取り繕われた。 不愉快だ。 実に不愉快だ。 屋上で寝よう。 幸い、天気は快晴。 春の暖かな陽射しが、心地よい安眠を与えてくれるだろう。 もちろん、以降の授業はサボるつもりだ。 休み時間は、既に残り5分を切っている。 特に睨み付けるような真似もせず、祐介は無言で教室を出た。 ガンをとばすのも面倒臭かった。 「……やっといなくなったよ、あいつ」 「多分授業もサボるわね、ああ良かったわ」 クラスメートが、陰口を叩く。 「上之宮さんも大変ね、あんなやつの隣だなんて。可哀想だわ」 「彼、嫌われているの?」 嫌われていようがいまいが玲菜は彼に悪印象しか抱かないが、そんなことはおくびにも出さずに尋ねる。 「ええ。度々問題を起こしては停学処分をくらう不良よ。進学校だってのに、ほんと迷惑よね」 「そんな言い方は……」 そう擁護しつつも、玲菜は祐介をフォローする気などさらさら無かった。
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