Chapter.1【二つの出逢い】

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教室を出た祐介は、ふと便意を催した。 小さい方だ。 「昼飯まで寝るんだし、トイレには行っておくか」 チャイムが鳴るまでに済ませて屋上に行かないと、道中で教師に不審に思われてしまう。 尿意に関して切羽詰まっているわけではないが、小走りでトイレへ駆け込んだ。 事細かな記述は中略。 無事に用を足した祐介は、手を洗おうと洗面所へ向かおうとした。 その時だ。 「……ん?」 微かに、すすり泣くような声が聞こえた。 気のせいかと思ったが、耳を済ますと僅かだが確かに聞こえる。 しかも、女の子の声だ。 男子トイレで女の子のすすり泣き声とは、一体どういうことなのか。 健全な男子以上に下ネタに飛躍させるのが得意な祐介は、一瞬淫らな光景を想像したが、すぐに否定する。 よりによって名門校でそれはない。 いや、でも以前関西の某大学で悲惨な事件があったような……。 それか、これが噂のトイレの花子さんなのか。 だとしたら、ここは男子トイレだということをしっかり教えてやらねば。 化けて出んならお隣さんだろと。 等とくだらない考えに耽っている場合ではない。 何か事情があることには間違いないのだ。 それも、誰かが悲しんで泣くような事情だ。 面倒事に首を突っ込みたがる性格ではないが、このまま放っておいては気持ちよく寝付けない。 祐介は、声の主がどこにいるか探した。 それは難なく判明した。 手前から四番目、一番奥の個室だ。 鍵がかかっている。 静かに歩み寄ると、祐介はそっとドアをノックした。
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